
Vol.14
ヨールクラップスープ
11月も終りに近づくと、ダヤンは毎日でも暖かいスープが食べたくなってきました。
そこである日マーブルマフの店に行き、スープの材料をありったけ買い込むことにしました。トマトに
にんじん、玉葱、ピーマン。それからじゃがいもとほうれん草、香辛料にオルソンさんのソーセージまで
ふんぱつし、持っているだけのルビー金貨におまけして貰いました。
月曜日にはトマトスープを作り、火曜日にはほうれん草、水曜日に玉葱を炒めてオニオンスープを
作ったら、木曜日にはじゃがいもとソーセージを煮込み、金曜日にまたトマトスープを作ろうとして
ふと手を止めました。考えてみればこの1週間、スープを作ることとそれを余さず食べることで精一杯、
友達ともろくに会っていません。
「なんだかばかばかしいや」ダヤンは鍋の中にぽっちりはいったトマトを覗き込みながらつぶやきました。
「そうだ、いっぺんに作ってしまえばどうだろう」ほんとにこんないい事なぜ今まで思いつかなかったん
でしょう。だいいちスープは煮込むほどおいしくなるっていうじゃありませんか。
ダヤンは鍋にたくさんの水を足し、残っていた野菜と香辛料にソーセージをみんな入れてしまいました。
そして、ストーブの薪を確かめると鍋に蓋をしてそのままベッドに入ってしまいました。
ぐっすり眠った翌朝、ダヤンは鼻をくんくんさせて起き上がりました。ストーブの薪は全部灰になり、
鍋の蓋をとってみると盛大な湯気とともにごった煮スープの力強い匂いがもわっと立ち昇りました。
どうやらスープは大成功のようです。それからの毎日、ダヤンは作り置きのスープを煮返しては食べ、
煮返しては食べ、浮いた時間は仲間と遊んで暮らしました。
そうして過ごす内に、気が付くとヨールカがやってきていました。
「大変だ!あしたは僕のうちでパーティだった!」手持ちのルピー金貨は全部スープの材料に使ってしまって
います。今はみんな鍋の中、野菜もソーセージもすっかりとろけたスープはおいしいのですがなんとも地味
な、まっ茶色。
ダヤンは急いで野菜箱をかき回しました。茶色い皮の玉葱に隠れて、にんじんが1本と少ししなびた
ピーマンがいくつか見つかりました。それから、お茶のとき用にとってあったクリーム。ダヤンはにんじんと
ピーマンを別々に茹でて裏ごしをし、赤と緑のピューレを作りました。そして仲間たちに、「あしたのメニューはヨールクラップスープ」というお触れを出しました。
翌日、イワンは全員分の木で作ったスプーンを持ってきてくれましたし、マーシィは食べきれないほどたくさんの焼きたてのパン、ウィリーはチーズの大きな塊、ジタンは立派な樅の木を。
そして、お客様の前には真っ白なお皿に茶色いスープの大地、緑のピューレの樅の木には赤いにんじんの
実がぽちぽちと成り、クリームの雪化粧をほどこした華やかなヨールクラップスープが置かれ、ダヤンは大いに面目をほどこしました。
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