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じゃあね!

木曜日, 2月 10th, 2011

戦地から帰る船の中で、父は国に着いたらすぐに結婚しようと決意したそうだ。

そのころ教員をしていた母と父の姉が知り合いで、話はとんとん進み、結婚が決まった。

はじめてのデートの待ち合わせは五反田の駅。

「おれが柱のかげに隠れてみていたらさ、

お母さんはスキップして踊りながらやってきたんだ」

ハンサムな父に母は惚れ、父は全面的に母を頼っていた。

「お母さんの作る飯はほんとにうまい。それにこれが早いんだ」

臆面もなくほめる父の言葉を母はコロコロ笑って聞いていた。

祖母を引き取り、病気の伯父の面倒を見ながら、一日も休まず国鉄を勤め上げた父。

お酒も飲まず、タバコも吸わず、こどもの頃の父は謹厳実直そのもの。

祖母を看取ってからは、母と世界中を旅して回った。

でも不慮の事故で母がいなくなって・・

お父さん、あれからあなたの心の迷走が始まったね。

去年、マイコの結婚式でスピーチしてくれた結びの言葉は

「じゃあね」

今この言葉をこちらから。

「じゃあね、お父さん。

あっちでお母さんと仲良くね。

きっと今度はお母さんが雲のかげに隠れて、身軽になったお父さんがフワフワと登ってく

るのを見ているよ。

お母さんと会ったらさ

『おまえが急にいなくなるから、おれはほんとに大変だったんだ』

って文句をいいなよ」

母から20年、入院後、一旦よみがえってから後はあまり意識もなく、苦しみもさほどない

まま、父は逝きました。